安曇野ワイナリー

11月11日、安曇野ワイナリーが初めて醸造した自社第1号のワインとなる「ナイアガラ」がいよいよ発売された。はじまりにふさわしい〝1並び〟の日、ワイナリーではスタッフたちが杯を掲げ、ひとつの節目を祝った。

第1号のワインは9月下旬、県内の契約農家で収穫されたナイアガラ品種から「NIAGARA 2008」がつくられた。今年の早春、小林龍義支配人が農家1軒1軒の方とぶどう栽培、ワイン造りについて話し合い、〝健全で質の高いワインづくり〟に賛同いただいた農家と契約し、ブドウの栽培をお願いした。収穫時期前には、各圃場をまわり発育状況を確認し、病気の有無や糖度など、独自に設けた健全で安全な品質規格に基づいてチェックし、収穫日を決め、仕込んだワインである。夏の終わりは雨量が多い時期もありワインの出来具合が懸念されたが、スタッフから笑みがこぼれるほどクリアなワインに仕上がった。

樫山工業が再生事業に乗り出して約1年。引き継いだ醸造タンクや製造ラインのほとんどが使えない状況から始まった。醸造家の戸川英夫氏は安曇野ワイナリーでの仕事を「クリアで雑味のないワイン造り」と表現し、その思いはワイン工場内の清潔さや安全性、ワイン造りにかかわるスタッフたちの精神面にもおよぶ。

戸川氏とともに醸造を手掛ける加藤彰醸造課長もクリアなワイン造りに情熱を注ぐひとり。戸川氏との出会いでワインの世界が広がったという加藤さん。戸川氏と2人3脚で栽培・醸造に携わり、世界を視野に入れたワイン造りに取り組んでいる。

仕込みの除梗(果粒の枝を除くこと)に始まり、破砕機や圧搾機、貯蔵タンクなどはすべてステンレス製。鉄に一切触れないことで雑味を防ぎ、醸造タンク内は徹底した温度管理で低温発酵している。農家が丹精込めて育てたブドウ1粒1粒を余すことなく生かそうとの姿勢である。

先陣を切ったナイアガラに続き、12月初旬には「コンコード2008」、12月中旬には「メルロー・ロゼ」を発売予定。そして来年6月の発売を予定している「シャルドネ」もタンク内で順調に時を重ねている。

ブドウ栽培における「暦」では10月31日がシーズン最終日。自社栽培のぶどう畑には、まだ緑の葉が目立つ。「これはブドウの樹が健全な証拠」と戸川氏。ワイナリーとして、観光拠点として未来へ希望をつなぐブドウの樹は、安曇野の大地にしっかりと根付き始めた。

この記事は(株)まちなみカントリープレス出版のKURAに掲載されたものです。