土をつくり、畑をつくる。そして生まれた2つの太陽 2008:05:20:10:52:01
2008.05.20 【ワイナリー誕生物語】
植樹祭を終え、ついにオープンを迎えた安曇野ワイナリー。オープンを控えた3月は、苗の運び入れ、ブドウ棚のワイヤー張り、ブドウの出来具合を左右する大きな要因のひとつでもある土づくりなど、季節の移ろいに負けない早さで着々と動き出していた。
4月1日、安曇野ワイナリーでは植樹祭を行い、いよいよ新生ワイナリーとしてスタートを切った。この日を無事に迎えるべく、春の兆しが見え始めた3月、現場スタッフらは土づくり・畑づくりに取り組んできた。
3月の終わり、植樹祭を間近に控えた頃に訪ねると、開墾も済んだ真っ白に光るブドウ畑が目に飛び込んできた。それはダム湖から運んだ砂利で、近づくと小さな石の粒が見て取れる。美しい安曇野の水にさらされた川原の砂利は余分な栄養を含んでいない一方で、ブドウの生育上必要な上質なミネラル分が含まれている。水はけが良いのでブドウに余分な水分を与えることもない。また、白い砂利は太陽の光を反射するので、太陽の光と地表からの太陽と、ふたつの太陽熱によってブドウは生長を促されることになる。
十分な太陽熱光線を受けたブドウには、ブルームと呼ばれる白い粉のようなものが果皮に現れる。これこそが果実の持つ健全度の証しなのである。 「砂壌土のブドウ園はフランスやドイツなどワインの銘造地で見られる河岸の良質ワインの生産地でね、ドイツのライン川沿いのブドウ畑は、太陽の光線熱と地表からの照返し熱と、そしてライン川の川面に反射する太陽の光線熱と、〝3つの太陽〟がある畑と呼ばれているけど、ここはさながら〝2つの太陽〟だね」と、醸造担当の戸川英夫工場長がにっこりと笑うと、「ブドウが実る時期が楽しみですね」と小林龍義支配人が応える。
畑では、種まきも行われていた。トールフェスクと呼ばれる芝草で、ブドウの棚の間の通路部分に生えることになる。雑草を抑えること、余分な水分を抑えること、また枯れたら有機質として土に返すことなど、さまざまな役割を果たす。そうして、着実に土づくり、畑づくりは進められてきた。
もちろん、今年の苗からすぐブドウができるわけではない。今シーズンは近隣の契約農家を中心に長野県内のブドウを使って仕込みが行われる。ブドウの苗の生長も、今シーズンのワインもともに楽しみだ。
一方で、ワイナリーの象徴であるロゴやラベル、看板づくりなども進められてきた。安曇野という美しい地に根づきながらも、世界を目指す。そんなスタッフらの想いが込められている。
この記事は(株)まちなみカントリープレス出版のKURAに掲載されたものです。