安曇野ワイナリー

2008年があけて早々、安曇野市(旧三郷村)の森の中に佇む安曇野ワイナリーの新たなる始動をお伝えした。醸造責任者として元マンズワイン工場長、山辺ワイナリー醸造顧問を歴任した戸川英夫氏を迎え、本格的なワイン造りと安曇野の観光拠点になるべく、施設の改修が急ピッチにすすんでいる。


かつて、地ビール醸造やヨーグルト製造、さまざまな農産物から作るワインなども手がけていた「株式会社安曇野ワイン」が経営破綻し、昨年末、機械製造業の樫山工業が買い取る形で「安曇野ワイナリー株式会社」として新たなスタートを切った。異業種の樫山氏の英断は長野県のワイン業界に新しい一石を投じ、さらに業界を活性化させる明るいニュースとなっている。


2月4日、一面雪に包まれた安曇野ワイナリーにオーナーの樫山宏社長、小林龍義支配人、醸造担当の戸川英夫氏ら、ワイナリーの創業スタッフが集まった。川沿いに広がるワイナリー敷地内には売店棟、事務棟、ワイン醸造場、バーベキュー小屋、ヨーグルト工場、地ビールレストランなど築年数と目的が異なるいくつかの建物が点在している。それらの現状を見て回り、改修計画を具体化するのが目的だ。周辺の松林の一部、1haほどをぶどう畑に開墾する。4月頃、醸造棟へのアプローチとしてシャルドネを2千本、メルローを千本新たに植える予定だ。「入口はこう、カウンターはあそこへ...」樫山社長の判断は速い。スタッフは小走りで後を追う形だが、「社長、ここに樽が入りきらなかったらどうしましょう」と戸川さんが空気を和ませる。「いいワインがゆったりと時を重ねられる熟成空間になりますように...」社長をはじめ創業メンバーの想いはひとつに固まる。



新たな観光拠点としての役割


北アルプスや上高地の玄関口、故郷の原風景である安曇野は信州の観光ブランドとしても絶大な人気を誇る場所だ。観光誘客は近県の観光地や周遊ルート設定が重要なポイントとなるが、安曇野ワイナリーは現状打破の起爆剤的存在になる可能性がある。絵地図でもわかるように安曇野ワイナリーの場所は松本市街と上高地を結ぶラインの中間点だ。間もなく東海北陸自動車道が全面開通し、岐阜から富山へ一気に抜けるルート設定が可能になると、安曇野の重要な観光拠点となるだろう。ワイナリーは国営アルプスあづみの公園とも近く、穂高地区に集中していた観光客の足を、この三郷堀金エリアまで延ばしてもらう動機にもなりそうだ。



この記事は(株)まちなみカントリープレス出版のKURAに掲載されたものです。