安曇野ワイナリー

民事再生中の安曇野ワイン。新たに設立した「安曇野ワイナリー」が、その事業を引き継ぐことになった。そして昨年末、安曇野ワインの醸造所の調査が行われ、安曇野ワイナリー始動の第1歩を踏み出した。

国産第1号のスノーマシンを開発し、現在は真空ポンプの製造販売で世界シェアを伸ばしている樫山工業。佐久市の信州工場の幻想的なイルミネーションで、その名を知る人も多いだろう。その樫山工業が安曇野ワインの再生に乗り出した。今回設立された安曇野ワイナリーは、樫山工業の100%子会社にあたる。

樫山工業・取締役社長の樫山宏氏(安曇野ワイナリー社長も兼務)は、自他共に認めるワイン好きで、ワイナリー経営にも少なからず関心があったが、そこに今回の話が舞い込んだ。「安曇野」という観光地としてのブランド力に勝機を見て、再生事業に乗り出した。「観光ワイナリーとして収益を伸ばし、それを支えに品質の良いワインを造る」という再生シナリオを描く。経営者として、ワイン好きとしてのアプローチといえよう。ワイン造りには戸川英夫氏を招聘。戸川氏が山辺ワイナリーで仕込んできたワインには、マスターソムリエの高野豊氏も太鼓判を押す。

昨年末、安曇野ワイナリーの第一歩として、戸川氏を中心に新しいスタッフたちで安曇野ワインの現状調査が行われた。基本的には、安曇野ワインで造られた製品や製造ラインすべてを安曇野ワイナリーが引き取る。安曇野ワインの在庫商品が、新生「安曇野ワイナリー」で販売するのにふさわしいか、今の製造ラインが使えるのかのチェックを行ったのだ。すべてのワインをテイスティングし、タンク一つひとつからボトリングラインまで、戸川氏の厳しい基準でチェックが行われた。この調査結果をもとに、今後の販売計画や投資計画が行われる。

まずは敷地内に約7500㎡のブドウ畑を新たに設ける予定だ。4月にシャルドネとメルローの苗木が植えられ、来年秋に収穫、醸造、そして熟成期間を経て安曇野ワイナリーのエステートワインが誕生する。もちろん、自社栽培のブドウだけでは足りない。「わたしたちの思いに賛同してくれる農家との協業を大事にしたい」と話すのは、樫山工業から送り込まれた安曇野ワイナリーの責任者、小林龍義氏。「質の高いワイン」という夢と「経営再建」という現実の舵を取る。その船はまさに今、旅立ちの途についた。

この記事は(株)まちなみカントリープレス出版のKURAに掲載されたものです。